自転車シェアリングの需要の偏りの対処方法 ― 再配置・インセンティブ・バレット配置

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自転車シェアリングでは、ラッシュ時などに不均一な需要のせいで自転車の分布に偏りが生じる。
つまり、あるステーションでは自転車が空になり借りることができない、あるステーションでは満車になって返却できない、といったことが生じる。

事業者はこの問題を対処するために様々な取り組みをしている。
本記事ではその対処方法を再配置・インセンティブ・バレット配置に分けて紹介する。

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再配置

再配置とは、事業者が満車になりそうなステーションから空になりそうなステーションに自転車を移動させる作業のことである。

例えば、朝のラッシュ時にはオフィス街のステーションが満車になりやすく、住宅街のステーションが空になりやすい。
そこで、事業者はオフィス街のステーションで自転車を何台か拾い、住宅街のステーションまで運ぶという作業をする。

In New York, It's a Crush to Find a Citi Bike During Rush - WSJ
自転車を再配置する様子 ― Wall Street Journalより

以上のように、再配置の原理自体はシンプルであり、世界中の多くの事業者が採用している。
しかし、再配置は数理的に面白い(難しい)特徴を示すため、多くの研究者の関心を惹きつけている。

需要予測

再配置をするためには、どのステーションがいつ満車・空になるか知る必要がある。
この予測はもともと事業者の「感覚」でされていたが、過去の利用データから気温・天気・周辺のイベントなどのデータとの相関を見つけ、正確に予測できたらとても嬉しいはずである。

したがって、機械学習によって満車・空になるステーションやその時刻を予測する手法が多数研究されている。

最短経路探索

また、ステーションは1000個に近くあるため、どのステーションからどのステーションに移動させるかも考える必要がある。
再配置によって移動中の自転車は当然サービス外になるので、なるべく早く移動させないと機会損失になる。
したがって、最短距離を見つけることも重要であり、いつ・どこに再配置するかも研究されている。

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インセンティブ

インセンティブは利用者に金銭的報酬を支払い、使ってもらいたいステーションに誘導するプログラムである。

例えば、借りたいステーションの近くに満車になりそうなステーションがあるとする。
このときは、利用者にポイントを渡して、わざわざ満車になるステーションで借りてもらう。
返却するときも同じで、利用者にポイントを付与する代わりに、わざわざ空になるステーションで返却してもらう。

確率の推測

再配置と同様にインセンティブは需要予測が重要である。
インセンティブ特有の問題として、「利用者にどのくらいの報酬を付与すると移動してもらえるか」が挙げられる。

この報酬と移動してもらえる確率の関係はやってみないと分からないものであり、オンライン学習によって真の確率に収束させる必要がある。
また、天気・気温・時間帯によっても移動してもらえる確率は変わるため、より問題を複雑にしている。

この問題によってインセンティブプログラムを採用している事業者は少ない。
CitiBikeの事例や、研究事例については以下の記事にまとめた。

バレット配置

バレット (valet) とは従事者、ホテルのボーイのような意味がある。
自転車シェアリングにおいてこのバレットプログラムは、多くの人が返却するステーションにスタッフを配置して、ドック数を超えても返却できるようにするプログラムである。

上述してきた再配置やインセンティブではカバーできないくらい需要が大きいステーションでこのプログラムが採用されている。

New Yorkで自転車シェアリングを展開するCiti Bikeを例に挙げると、次の写真のようにステーションの横にあるスペースを利用してドック数を拡張して利用できるようにしている。

CitiBikeより

確認した限り、CitiBikeでは2019年の春からこのプログラムをはじめ、現在(2020年8月)でも行っている。

利用者はあくまで「ドックに自転車を返す」という通常の利用の範囲でこのステーションを利用し、バレットスタッフは自転車をドックから外すという運用をしているようである。

まとめ

自転車シェアリングにおける最大の課題である需要の不均衡を解決すべく行われている再配置・インセンティブ・バレット配置を紹介した。

世界的に自転車シェアリングの需要は増加しているので、どうやってオペレーションコストを下げるかは最も重要な課題であるように感じる。
今後も世界の自転車シェアリング事業者がどのように需要の不均衡さを扱うか見守っていきたい。

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