MaaSとは

MaaS
MaaSスマートシティ自転車シェアリング
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最近「MaaS (Mobility as a Service)」という言葉が交通やスマートシティの文脈でよく使われるようになってきている。
本記事では、MaaSの言葉の定義や事例などについてメモする。

なお、以下の同じ著者によって書かれた本でMaaSの詳細について知ることができる。
これらの本は、現状最も詳しくMaaSについて解説している。
本記事でも終始これらの本(出版順にMaaS本 [1]、MaaS本 [2]とする)を引用する。

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言葉の定義

MaaS (Mobility as a Service)とは、一言で言うと「様々なモビリティに関するサービスをパッケージングしたサービス」である。

「様々なモビリティに関するサービス」とは、

  • 路線検索
  • ルート検索
  • 決済
  • タクシー
  • レンタカー
  • ライドシェアリング
  • 地下鉄
  • 鉄道
  • バス
  • 自転車シェアリング
  • 電動キックボードシェアリング

などである。
これらを統合したサービスがMaaSである。

しかし、個々のモビリティサービスを指してMaaSと言っている人が散見されるように思われる。
誤解のないようにしたい。

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提唱者

初めに提唱されたのはSonja Heikkilä氏が2014年4月に発表した修士論文「Mobility as a Service – A Proposal for Action for the Public Administration, Case Helsinki」である。

しかし、彼女は「MaaSのクレジットはSampo Hietanen氏にある」と公言しているそう (MaaS本 [1])。

Sampo Hietanen氏は2020年現在、MaaSアプリ「Whim」を手掛けるMaaSグローバル社のCEOを務めている。
Whimに関しては事例として後に紹介する。

メリット

モビリティに関わる様々なサービスを統合したMaaSによって、どんなメリットが得られるのか利用者、事業者分けて紹介する。

利用者

様々なアプリを行き来しなくて、1つのアプリ上で交通手段を決定することができる。

マイカーを保有しなくても月額の定期課金で車に近い自由度で公共交通機関を使うことができる。

複数の選択肢を持つことで混雑を避けたルートを使うことができる。

事業者

MaaS事業者は自社の交通サービスを持たなくても収益化できる。

個々の交通サービス事業者は利用数の増加が期待できる。

行政

交通渋滞が減る。

マイカーの利用が減って環境に優しい。

課題

需要が未知数

マイカーを捨てて、複数の交通手段をシームレスにつなぐことがMaaSの役割である。
確かにサブスクリプションで様々な交通サービスが使い放題になるのは魅力的である。
しかし、次のような疑問も残る。

  • 日常で複数の交通サービスを使うことは多いだろうか?
  • 都市部でマイカーをメインの交通手段にしている人が公共交通機関を使いたいと思うのか?
  • 都市部でないところでは十分に公共交通機関が充実しているのか?

僕は電車を使うことが多いが、ほとんどの移動が電車と徒歩だけで完結する。
複数の交通手段を使う場面として思いつくのは観光をするときである。

観光に行くときはたしかに現地の交通手段を調べるのは面倒なので、ホテルや新幹線・飛行機のチケットをパックとして売っているように現地の細かな交通手段も統合されても良いかもしれない。

法律

海外では電動キックボードのシェアリングやUberやLyftを始めとするライドシェアのような新しいモビリティサービスが生まれている。

しかし、日本の法律ではそれらのサービスを展開することはできない。
行政は規制緩和に向けて動いているようだが、海外に比べて大きな遅れをとっているのは事実である。

オープンデータ

MaaSアプリに統合するためにオープンデータは重要な役割を果たす。

しかし、現状ではどんなデータをどのような状態で公開すれば良いのか分かっていないという。
地方の小さい事業者はITに投資する余裕もないため、データさえ取れていない。

ビジネスモデル

基本的にはサブスクリプションで公共交通機関などが乗り放題になるビジネスを展開している例が多い。

MaaS本 [1][2]の著者も課題が多すぎるため「MaaSは儲からない」という声があることを認めている。
しかし、インターネット黎明期になぞらえ、誰も収益化する方法を知らない状況と似ていると著者らは述べている。
その上で、「本当に儲かるビジネスモデル」を見つける人が出てくると述べている。

誰が事業者になるのか

WhimのHietanen氏は自社の交通サービスを持たない中立な立場を取ることができるものがMaaS事業者になるべきだと述べている。

もし自社の交通サービスを持つ事業者がMaaS事業を手掛けると、自社サービスを中心にMaaSを構成するようになり、競合を除くようになる。
これは利用者が本当の意味でマイカーに変わる自由な移動を手に入れるMaaS構想とはかけ離れてしまう。

WhimのHietanen氏の考えるビジネスモデルやロードマップは非常に参考になる。

残念ながら日本でMaaSを手掛けようとしている事業者は自社交通サービスを持っている事業者がほとんどであるらしい。
これは単に自社交通サービスを持っている企業はMaaSを始めやすいからであるため、当然の流れでもある。
中立的な立場でMaaSを事業化できる企業は非常に限られるような気がする。

Beyond MaaS

Beyond MaaSとは簡単にいうとMaaSと紐づく周辺サービスと一緒に収益化していくことである。

紐づく周辺サービスとは、

  • 住宅・不動産
  • 観光
  • 医療・介護、ヘルスケア
  • 小売
  • エネルギー
  • モバイル・通信
  • 金融
  • 保険
  • 広告
  • ゲーム・イベント
  • シェアオフィス
  • 物流
  • 災害・防災

などである。
詳細はMaaS本 [2]の第7章に書かれている。

しかし、関連するサービスと直接結びついているのは個々のモビリティサービスが多く、「MaaS」にのみ結びつくものは少ない。
MaaSと直接結びつくのは観光、金融(決済)、保険くらいであろうか。

したがって、MaaS本 [2]ではMaaSに関連する事業として紹介していたが、個々のモビリティサービスと紐づく関連事業が多いため、読んでて違和感を覚えずにはいられなかった。

事例

MaaSの先駆者 Whim(ウィム)

MaaSの生みの親でもあるHietanen氏が率いるMaaSアプリWhim
フィンランドの首都であるヘルシンキで事業を展開している。

月額499ユーロ(約6万円)のプランでは、タクシー(5km以内)またはレンタカーいずれかを毎日選択でき、加えて、バスや電車、電動キックボードなどが乗り放題になる。
月額59.7ユーロ(約7200円)で公共交通機関乗り放題のプランも用意されている。

日本での展開ももうすぐらしい。

Jelbi(イェルビ)

ドイツの首都ベルリンでMaaSアプリを展開するJelbi

サブスクリプションではなく、移動のたびに経路を検索してバス、電車、自転車シェアリングなどの好みの移動手段を選択して経路を決定できる。
また同時に決済もアプリ上でできる。

購入するとその情報はアプリ上のQRコードに格納されるので、乗るときにそのQRコードを読み取らせるだけで良い。

Mobility X – Zipster

シンガポールでアジア初となるMaaSアプリを開始したMobility X社のZipster

「CAR LIGHT」という車をゼロにするのではなくて、半分は公共交通機関を使いましょうというスタイルを提案している。
車を持つ人は車を持つ事情があるという配慮をしている。

ただ、シンガポールは自家用車の保有コストが高く、駐車場代が月額2,3万円する。
そこで月の半分は駐車場が利用できて、残り半分は公共交通機関が利用できるというプランを提供している。

GOJEK(ゴジェック)

配車サービスを展開するGOJEK

MaaSはまだやっていないが、周辺サービスと連携しているという文脈でMaaS本 [2]で紹介されていた。

  • バイクタクシーの配車
  • 車タクシーの配車
  • 配送
    • 料理
    • 荷物
  • マッサージの手配
  • ホームクリーニングの手配

など、配車サービスを中心に様々な付随サービスを展開している。

まとめ

本記事ではMaaSについて2冊の本を引用しながら簡単に紹介した。

MaaSが重要であるのは賛成だが、現状では個々の交通サービスが成熟することの方がもっと重要であるように僕は感じる。
中立的な立場でMaaSを展開できる事業者は非常に限られるため、そこまでみんながみんなMaaSを意識しなくても良いのかもしれない。

また、自動運転タクシーが本格的に展開されたとき、マルチモーダルという言葉がなくなる可能性さえある。
したがって、自動運転が鉄道やバスなどの既存の公共交通機関とどのように共存していくかも気になるところである。

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